君に届くな

好きだけど届くな それが幸せ

ヤバT武道館公演

ヤバイTシャツ屋さんというバンドが好きだ。大学のサークルでされた現在全員が20代後半のスリーピースバンドなのだが、ロックならではの勢いのある曲調と飾らない素直な歌詞が好きだ。

わたしは2年半ほど前までオーストラリアに住んでいたのだが、日本語ほど婉曲した表現がない英語を話しているとだんだん脳が英語仕様になって難しい日本語を受け付けなくなってくる(?)。そんな時でもすんなりとヤバTの楽曲は頭に入ってきたし、すっかり遠くなってしまった母国の言葉に癒され励まされてきた。コロナウイルスが流行り始めた頃は特に立て続けに飛行機がキャンセルになり、帰国できないかもしれない問題や同時期にプライベートで立て込んでいたことなどもあり日々ギリギリの精神状態だったのだが、ちょうどその頃にリリースされた泡 Our Musicの底抜けの明るさに何度も励まされていた。もちろん帰国してからも大好きで、ライブに足を運ぶようにもなった。


そんなヤバTが2022年8月25日、ついに武道館公演をした。目標である紅白歌合戦出場が叶うまでテレビ出演はしないというポリシーの彼らなので、口コミやライブでの演奏、ネットで話題になったことだけが力となって全チケットを完売させたのである。すごい。

記念すべき公演なので是非行きたいと思い、日本武道館に足を運んだ。ヤバTにそっくりの覆面バンド(という設定の)Buyer clientがオープニングアクトを飾り、ゲストとしてメンバーの家族も演奏やコーラスをし、メンバーも顧客(ヤバTのファンネームである)も笑顔いっぱいであった。

そんな中ギターのこやまたくやさんがMCで「コロナ禍でたくさんの人たちが悩みを抱えるようになり、その前日まで連絡を取っていた友達が急に亡くなってしまったりもした。飲みにいこうよとか声をかけてあげていたら、亡くなることはなかったのかなって後悔した。3年前に良くない形で家族を失った経験もあり、もういなくなってほしくない。どうかみんなには生きていて欲しい。」という内容を話し、寿命で死ぬまでという一曲を演奏したことで思いがけずわたしは号泣してしまった。自分自身病気を患っていることもあり、1日1日フラフラとあちら側に踏み入れてしまいそうでまた戻ってを繰り返す日々であるが、生きていて欲しいというメッセージがこんなにも響くことがあっただろうか。生きてということは簡単であるし誰にでも言えるだろうが、ここまで必死で暖かくて素直な思いは初めてだった。

その後も怒涛の勢いで全32曲。隣の男性顧客と互いに視界の端で煽り合うように跳んだり跳ねたりヘドバンしたり、体全てで音楽を楽しんだ。


彼らの夢の一歩に近づく姿を見ることができ、本当に良かった。これからも「うるさくてくそ速い音楽」の行く末を見届けたいと思う。

 

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この曲を聴くとオーストラリアで闘い抜いた日々を思い出して、明るい曲調なのに泣きそうになる。

ヤバTの代名詞ともいえる一曲。キッス!キッス!